小さな空間なのに、どこまでも広がりを感じるフェルメール。編集長haruの《アーティスト・デート》第三会
2019/04/27
先日は大阪市立美術館のフェルメール展に行ってきました。
フェルメールの絵画は35点しか現存していないそうです。
そのうちの貴重な6点が今、大阪に集結しています。(2019年5月12日まで!)
今日は私の感じるフェルメールの魅力についてお伝えしたいと思います。
メッセージ性のある絵
フェルメールといえば、とても有名な「牛乳を注ぐ女」を思い起こされる方も多いかもしれません。
wikipediaより https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%9B%E4%B9%B3%E3%82%92%E6%B3%A8%E3%81%90%E5%A5%B3
キッチンの一画を描いている作品で、中央に大きく女性が描かれています。この女性は、この家の主人ではなくメイドです。
フェルメールはオランダの作家。その時代のオランダで描かれていたメイドさんたちは、男性たちの欲望をかきたて
家庭の名誉や秘密に悪影響を及ぼす存在として描かれることが多かったようです。
でも、フェルメールはメイドをとても愛情のこもった気品ある存在として描いています。
胴回りもしっかりしていて、色鮮やかで美しいエプロンを巻いています。
フェルメールはこのように、家庭の日常をしっかりと支えてくれているメイドさんたちへ感謝と愛情の念を込めて
こうした温かい作品を残したんじゃないかなと私は思っています。
また、よくみてみるとエプロンの色は鮮やかな美しいブルーです。あえて机の上にもブルーの布地を置いていることから
きっとここにもメッセージがあると思います。
また今後しっかり書きたいのですが、宗教画においてマリア様はブルーの服や布地を身にまとっていることが多いです。
(だから、複数の女性がいてもどの人がマリアかはいつもすぐに分かるのです。)
この絵でもこの女性は特別な存在であり、ちょっと謎めいているモナリザみたいな存在なのかもしれません。
そうやって一枚の絵をじっくり観てみるととても面白いです。
小さい空間を描くのに
また、今回大阪展のみで展示されているこの「恋文」という作品を観てください。
これもまた、プライヴェートで小さな空間を描いていますね。鑑賞者の私たちがこちらからそっと覗いているような構成になっています。
とても小さい空間を描いているのにとても広がりを感じる。
なぜなら、その手には手紙があるからです。そしてタイトルの「恋文」。
驚いたような表情の女主人が持っている手紙は、誰かから届いたものなのでしょうか。
絵をよく観てみるとぬぎっぱなしになっているスリッパに、おきっぱなしのブラシ。
多分、彼女は誰かとの恋にうつつをぬかしている状態なんだと思います。
そして、そんなどこか憎めずに愛しい女主人を優しく親密な眼差しで見つめるメイドの女性。
このように、この絵には二つの関係性が描かれているのです。
ひとつは、手紙を送ってきてくれた(もしくは送り先)の相手と女性の関係性。
ふたつめは、女主人とメイドの関係性。
その関係性が豊かに見えてくるから、この絵は小さい空間を描いているのにどこまでも豊かな広がりと深み(そして親しみ)を感じとることができる。
絵の中にいる人物と、絵の外に描かれずに語られている人物。その関係性を魅せてくれる。
だから、フェルメールの絵画は観た人の心を捉えるのかなと思います。
対象への愛情、丁寧に描きこまれているフェルメール絵画を楽しんで。
とても細かく細かく描きこまれているフェルメールの絵画。是非実物を観てみてほしいなと思います。
普段はオランダやニューヨークやその他の都市に展示されているものが今、大阪に集まっています。
特に関西圏にいらっしゃる方は是非、天王寺の大阪市立美術館を訪れてみてくださいね。
ちなみに、最終日の5月12日までは休みなく毎日朝8:30から開いているようで、朝がねらいめです。
描いている対象への惜しみない愛情。尊敬。それがそこはかとなく伝わってくる素晴らしい絵画を観て
素晴らしい時間を過ごしてきてください。
編集長haru