「曖昧なものにこそ宿る美しさ」ロンドンを描いたモネ。編集長haruの《アーティスト・デート》第四会
2019/07/07
http://www.kansaiartbeat.com/kablog/entries.ja/2016/11/asahibeer-oyamazaki_monet.html
本日はふらりと、現在(2019年7月7日) 兵庫県立美術館で開催されている
「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション」展へ行ってきました。
雨の季節の合間の良いお天気で、お散歩日和でした。
期待以上の素晴らしいコレクション展で、充実した2時間ほどの鑑賞になりました。
コロー、ミレー、クールベ、ドガ、ルノワール、カサット、ピサロ、シスレー、セザンヌ、ファン・ゴッホ、ボナール、マティス、ルオー、マルケ、ヴラマンク、シャガールと錚々(そうそう)たる画家の作品が集結していましたが(カタカナばっかりでじゅもんの言葉みたい!笑)
今日私が心を鷲掴みにされたのは、こちらの作品でした。
《クロード・モネ / テムズ河のチャリング・クロス橋 1903年》
ロンドンを描いたモネ
モネと言えば、ジヴェルニーを始め母国のフランスの絵がお馴染みですね。私もジヴェルニーのモネの庭の絵が大好きです。
でも、モネはイギリス・ロンドンの風景も数多く描いています。
モネは、70年の普仏戦争から逃れるためにロンドンへ半年ほど滞在、
その後ロンドンへ勉強に行かせていた息子ミシェルが体調不良になったことで約20年ぶりに2週間ほど滞在します。
その後も何度もロンドンへ訪れたモネは、数多くのロンドンの景色を捉えた作品を制作しました。
そして、ロンドンの滞在を終え、ジヴェルニーに戻った後もロンドンの風景に再度手を入れ続け、ようやくまとまった形で発表しました。(04年、デュラン=リュエル画廊にて)
ロンドンの霧
私haruは、もう10年以上前になりますがロンドンを一度訪れたことがあります。
3日ほどの滞在でしたが、ロンドンの街並みはとても印象深く、街を取り巻く幻想的な雰囲気を思い起こすことができます。
ロンドンと言えば、霧。
フライトの遅延やキャンセルの原因にもなり、車の運転にも支障があり…と厄介な存在のようにも思えるかもしれません。
また、モネがこの絵を描いた約50年後、ロンドンの街を覆った霧「ロンドン・スモッグ(Great Smog) 」は英国史の中でも
人命に関わる大気汚染被害のはじまりとされ、たくさんの方がこの霧(スモッグ)により命を落としたという出来事もありました。
そうした、厄介な存在でもある霧なのですが、モネはこうした言葉を残しているようです。
もしも霧がなかったら
「もしも霧がなかったら、ロンドンは美しい街ではなかっただろう。
霧こそが荘厳な美を街に与えているのである」
モネは画商のルネ・ギンペルに対してこう語ったそうです。
霧はすべてをぼやかしてしまい、すべての輪郭を曖昧なものにします。
けれど、霧のそうした性質で、街は荘厳な美を湛えることができた。
モネはそう言うのです。モネの視覚世界には、霧は美を支える大事な要素であったのですね。
あいまいなものこそ
私たちにはどうも、明白な物事や、一点の曇りもない美しさを好いてしまう傾向があると思います。
でも、輪郭がぼやけて見えないからこそ妖しく美しいものってあると思うんです。
モネの描くロンドンのチャリング・クロス橋のような、じっと目を凝らしてみないと風景が見えてこないような絵にこそ、
内に篭る美しさを発見できる目を持っていたいと思います。
日常生活でも同じことが言えるかもしれません。
あいまいなものに宿る美しさも美しさに他ならず、そういうものをばっさりと切り捨ててしまうのはもったいないかもしれません。
あなたの周りにあるあいまいな物事の中に、どんな美しさを見つけられるでしょうか?
編集長haru