ポラリス・ア・ラモード

書評(aki/ものがたり)

「ハグタイム」パトリック・マクドネル 元書店員akiが案内する物語の本棚

aki

2019/01/24

 
とっても小さな こねこのジュール
 
ジュールのこころは愛でいっぱいで
せかいをよくするために
「せかいをまるごと だきしめたい」 
そう思っていました。
 
そして、だれかをうっかり
ハグしそこねたら困るから
《ハグ名簿》を用意して
旅に出かける決意をしました。
 
出かける前に
親友のねこといぬに
ぎゅっと行ってきますのハグ。
 
 
ジュールは船に乗り、アフリカ大陸を目指します。
アフリカではゾウやキリン
バオバブの木にぎゅっとハグ。
 
ジャングルで出くわした
みたことのない生き物にもハグ。
すると、ジュールのハグに
「ようこそ、よくきたね」と答えてくれました。
 
次はインドへ。
数が減っているトラに会えるか不安なジュール。
 
「だいじょうぶ。ハグできる」と
自分に言い聞かせながらトラを待ちます。
そして、やっと出会えたトラにもハグ。
 
旅はまだまだ続きます。
 
ついに北極までやってきたジュール。
ここでジュールは
《ひとりぼっち》を体験します。
“くすん”と涙をこぼすジュール。
 
そんな時、誰かにしっぽをつかまれます…。
 
 
 
せかいをまるごとハグするために
せかいを旅するジュールのものがたり。
 
ジュールの旅の終わりには
素敵なプレゼントが待っているのです。
 
 
ちいさなこねこのおおきなゆめ。
ちいさなこねこのおおきなぼうけん。
 
ジュールのハグの旅の終着点。
ぜひ、見届けてあげてください。
 
 
 
「ハグタイム」
パトリック・マクドネル  あすなろ書房
 

ハグってなんだろう

 
ジュールが世界をよくするために選んだ方法は
世界をまるごとハグすることです。
ハグで伝えられることはたくさんあるのです。
 
ハグは挨拶でもあるけれど
愛情、友情を表し、伝えることができます。
 
嬉しい時には、一緒に喜ぶためのハグ。
悲しい時には、なぐさめるためのハグ。
 
ぎゅっと抱きしめられた時、
その人の温かさに心が温まり
その人の腕の強さに心が勇気づけられます。
 
また、お祝いの時や
スポーツなどで盛り上がった時には
男女関係なく、みんなでハグをして
喜びを分かち合う姿をみることがあります。
 
ハグは感情を共有するツールにもなるのです。
 
 
 
ジュールは
たった一つのことを伝えるために旅に出ます。
 
「わたしは あなたが たいせつだよ」
 
どんなに遠い場所でも、言葉が通じなくても
ハグでならきっと伝わる。
ジュールはそう信じています。

ジュールからのメッセージ

 
ジュールは決断し、実行できる、こねこです。
「 世界をまるごとだきしめる」という目標をたて
《ハグ名簿》まで念入りに作って、準備をして旅に出ます。
 
未知の生物に出会ったり
旅の途中で不安になったり
淋しくなっても、決して諦めず旅を続けます。
 
 
 
ジュールは言います。
「世界はとてつもなく大きいね。だけどとっても小さいよね」
 
 
私はこう解釈します。
「目標は困難に見える。しかし恐れるに足らず」
 
 
困難だと思っていることも
一歩踏み出してみると
意外と大したことではないかもしれない。
 
簡単ではないかもしれないけれど
やり遂げられるかもしれない。
 
時間はかかるかもしれないけれど
達成することができるかもしれない。
 
何かを始める時に
つい不安になったり躊躇してしまう私たちに
「大丈夫だよ」「そんなにこわくないよ」と
声をかけてくれているような気がしました。

ハグタイム

 
日本人にとってハグは
まだ日常的な行為ではないと思います。
 
しかし、私は幼い頃から寝る前に
「おやすみなさい」の言葉とともに
ハグをしてもらっていたので
ハグに対する抵抗は少ないです。
 
編集長haruと会う時はいつも
軽くハグをしているような気がします。
(本当は両手を広げて
飛びつきたいほど大好きですが自重しています.笑)
 
 
家族や信頼関係のある人と
ハグをすると
心が落ち着きほっとします。
 
人でなくても、例えば、
ペットやぬいぐるみなどでも
その感覚は十分に得られると思います。
 
まずは、近くにいる大切な存在に
ぎゅっとハグをしてみませんか。
 
 
 
「だいじな ひとを ぎゅっと だきしめよう。
 
 あなたにとって そのひとが
 どんなに だいじか つたわるように。
         – Patrick McDonnell –  」
 
 
ライター  aki