ポラリス・ア・ラモード

インタビュー

株式会社Fianco代表・スーツ コンシェルジュ / 原 毅郎さん「自己概念さえも変えてくれる装いを届けたい」《前編》

haru

2019/03/25

インタビュー polaris for YOURSELF vol.6

株式会社Fianco代表・スーツコンシェルジュ / 原 毅郎さん

「自己概念さえも変えてくれる装いを届けたい」

《前編》

自分の生きる上での指針やポリシー、「ポラリス(=北極星)」を持つ人たちのインタビュー

今回は、大阪市・中津駅すぐに工房つきサロンを持ち、オーダースーツを取り扱う

株式会社Fianco~Suit-Barista~の代表、原 毅郎(はら たけお)さんをお招きしました。

装いを変えることで自分自身を変えてきたお客さまをたくさん見てこられた原さん。

どんなことがあって、サロンを持つことになったのでしょうか。そのストーリーをお聞きします。

「べき論」で動いていた、かつての自分

haru:  今日は宜しくお願いします。本日も素敵な装いでカッコイイです!

原(以下、Take) : ありがとうございます。嬉しいです。

haru: 今日はこれまでの原さんの道のりをお伺いしたいんですが、まずは子どもの頃の原さんについて聞いてみたいです。

確か、厳格なお家で育たれたんですよね。

Take: そうですね。テストは常に90-100点を取らないといけないし、朝起きたらNHKという感じ。

みんなが見ているテレビ番組のこととが僕は全く分からない少年ジャンプも読んだことがない。

そんな中で、僕も真面目にしなきゃという思いが強くなりすぎてしまって、今から思うと自分のことは一旦置いておいて周りの役に立つべきのような「べき論」で動いていて、自己犠牲的な感じだったような気がします。

みんなが知っていることを自分は知らないということはかなりキツイことで、自己イメージもかなり低かったですね。

服を通して自信を持てた原体験

haru: そうだったんですね。今の原さんを見ていて想像つかない感じでもあります。自己イメージが変わってきたのはいつ頃だったんでしょうか。

Take: おそらく、高校の頃ですね。小さい頃は、大丸百貨店が好きだった母にくっついて百貨店に行ったり服を買ってもらったりしていたこともあったからか、中学の頃から服が好きになっていたんです。

その後、高校は私服OKのところだったのでより服にこだわるようになって、雑誌で研究して友達と三ノ宮で服を買ってということを始めました。

そうしたら、高校のみんなにハラタケオのことは知ってもらっていったんですよ。「ああ、あの服が好きな子ね」っていう感じで。

その頃から、すこしずつ自分に自信を持てるようになってきました。思えば自分の原点かもしれません。

haru: その体験って、今の仕事にも繋がっているような気がします。後ほど掘り下げてお伺いさせてください。

ちょいワルおやじ向け雑誌を愛読した大学時代、スーツの格好よさに開眼

haru: 中学・高校で服にこだわるようになった中で、今仕事でメインで関わられているスーツはいつ好きになったんですか?

Take:大学時代ですね。自分自身がスーツを着るということはほとんどなかったんですが、なぜかスーツの雑誌を手にとって読んだんです。レオンとかちょいワルおやじ系の。

haru:  大学生でちょいワルおやじ!渋い(笑)

aki:  そういう雑誌で小物使いとか、靴と靴下の合わせを見るのは楽しいので、分かる気がする。

Take:   男のスーツはルールがある。そのルールを守る中でも、個性出すぞという感じが格好良かった。

こだわらないと何ともしようがないというのが、男っぽいなあと思ってぐっとその世界観に惹かれたんです。

コラムとかうんちくを書いたようなものも、一回読めば絶対に内容を忘れなかった。だからこれは好きなんだなあと思っていました。  

服飾の道へではなく、銀行員に

haru: そうして服やスーツに目覚めた中で、最初から服飾の道へ進まれず銀行員という道に進まれたのはどうしてですか。

Take:  インターンシップでアパレルの量販店の店舗に立つという10日間のプログラムに参加したんです。

朝の朝礼で今日は何着売らないといけないとかそういう話をして店に立つのですが、

自分は、「このラインナップの中から選ぶのって無理じゃないか」とかこの方だったら他のブランドの方がいいんじゃないか」っていう風にいちいち思ってしまって、これはショップの店員さんは無理やと思いました(笑)

その体験でアパレルはダメって思ってしまい、就活では全くアパレルは見なかったです。

じゃあ服関連は趣味にしようということで、他は何かなと思った時に、「銀行員」という仕事に興味を持ちました。

昔から縁の下の力持ちになって、ものごとが滞りなく進んでいるのを見てほっとするような感じが好きだったんですね

大学時代、個別指導のアルバイトをしたことで、よりその性質みたいなものが花開いた感じがあって。

家庭環境になんらか問題のある子も通ってくれていた塾だったんですが、半年一年ずっと付き合っていく中で、

最初は下を向いて何も話してくれなかった子が、小学校でこんなことがあったよっていう風に話してくれるようになって、

そんな成長が嬉しかったんです。国数社理英を通して生徒ちゃんたちにアプローチする、というのが金融の知識や業界に置き換わって

困っているであろう中小企業の経営者さん達にアプローチしていくということも同じなのかなと思って、銀行に入りました。

haru: 大手の銀行でしたよね。学生の頃に思い描いていたことは実現できましたか?

Take: 実は、学生の時に思い描いていたのとはかなり違ったというのが現実でした。お客さんの方を向くというより銀行を向いて仕事をすることも正直多かったですね。

それは、システム上仕方なかったところもありましたし、自分に知識や経験もなかったということも今から考えたら大きかったと思うのですが。

銀行には結果的には約4年勤務しましたが、後半の3年は本当はダメなんですが副業で土日はスーツ関連の仕事をしていました

haru: 内緒で副業してたんだ!

Take: ま、結果的にはバレたんですけどね(笑) 

副業を始めたきっかけ

haru: 副業でスーツ関連のことをはじめたきっかけはありましたか。

Take: 大学時代に仲が良かったと友達と、社会人2年目の時に久しぶりに会ったんですが

彼は独立をしていてファイナンシャルプランナーをしていたんですね。

会った瞬間に生き生きしていてすごく憧れを感じました。銀行員の自分とは全くスタンスが違いすぎて、

正直なんじゃこいつみたいな感じだったんです。別の生命体やみたいな(笑) 

haru: 異次元な感じだったんですね(笑) 

Take: 彼が所属する FPの事務所での勉強会などに僕も時々参加して、ご縁と日々の感謝の気持ちを大切にして、紹介をいただいて仕事をしていくというスタイルに憧れが深まりました。

自分がそのスタイルで仕事をするなら、その時はスーツかなという風にふと思いました。

その友人からの応援や後押しもあり、仕立て屋さんとして独立している人を紹介してもらったりして

オーダースーツという業界の商流や商慣習を初めて知り、教えてもらいながら採寸の方法なども学んでいきました

そういう形で副業がふわっとスタートして行ったんですが、当時は独立するなんてことは全く思っていなかったんです。

いわゆるリスクばかり思い浮かんでイメージも湧かなかったですね。

haru: ふむふむ。服のことを少しずつ仕事にしていく上で、まずはじめに取り組んだことはなんでしたか。

Take:  週末に人と会って自分の夢を語ってくること!という宿題をその友達がくれて。 最初は銀行の同期や大学の友達に

「⚪︎⚪︎ちゃん、僕、夢できたんやんか」という

意味わからんアポ取りからはじめました。(笑)

みんながみんな夢や目標を持っていたわけじゃなかったし、最初は僕が一方的に自分のやりたいことを友達に語りまくるというスタイルを取っていたのですが、その友達の宿題の意図は、ファンづくりをするということだったんです。

その後は、夢を語るだけでなくて、採寸をさせてもらえないかというお願いもしてひたすら採寸の練習をしました。

その後、そのFP さんたちの団体が、周りを応援するというスタンスが身についている方々だったこともあり

ふわっとはじめた副業生活が半年ぐらい経った時に「着こなしセミナー」のようなものをそのFPさんたち向けにさせてもらうという機会をいただきました。セミナー後、その場でスーツのオーダーメイドの受注会もするような感じで

ありがたいことに、ひと月の売上で100万を達成することもできるようになったんです。

簡単な採寸シートを自分が作って、それを自分の当時の師匠のような人が清書と調達などもしてくれて

完成品を僕がお客さんに渡すというスタイルです。いわゆるコーディネートというか、仲介の形でした。

自分は、生地選びなどまではできるんですが業者さんとの繋がりがなかったのでその先は師匠にお願いしていたんです。

haru: ひと月で100万円!すごいですね。

Take: はい。本当にありがたいと思いました。そのいただいたお金はどちらかと言うと「原頑張れよ」という僕を応援するための皆様からの諭吉ちゃんだった、いわゆる投票券みたいなものだと思ったんです。

もしこの人達に今度2着目を作ってもらえるようなことがあれば、その時はプロとしての自分に「本当にありがとう」と言ってもらえるように知識も経験もつけようと思いました。

編集後記

スーツの仕事をはじめて最初の方にいただいたお金は、まだ知識も経験もない自分を応援してくれた人たちの、自分への投票券のように思ったという原さん。

そんな彼が独立した後のストーリーは後編で。

服の持つ可能性についてもたっぷりとお話いただいたので楽しみにしていてください!

編集長 haru 

→後編へ続く